【スタートアップ深層】Amai Proteins - 独自の発酵技術により世界初の健康的な砂糖代替品を実現

毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。


今回は、Amai Proteins社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた【前編:Voiceitt - 言語障害を抱える人々向けの音声AIアシスタント】はこちら


※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年12月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です



Amai Proteins(https://www.amaiproteins.com/

Dr. Ilan Samish(CEO)



◆ プロテインエンジニアリングで世界の健康問題に挑む


 Amai Proteins社(以下:Amai Proteins)は、AI-CPDという手法を用いて、通常の砂糖より最大10,000倍甘く、且カロリーゼロの新規甘味タンパク質を開発する。


 ”Amai (=甘い)”というネーミングは、甘味料の分野において、グルタミン酸ナトリウム・ステビア・トレハロースなど様々なイノベーションを生んだ日本にちなんでいるという。

 世界保健機関(WHO)によると、1975年以来世界的に肥満人口は3倍に増加しており、糖尿病やメタボリックシンドロームといった病気が顕著になっている。世界の砂糖市場は900億ドル規模といわれるなかで、この分野のスタートアップは巨大なポテンシャルを秘めている。


 今回は、同社創業者兼CEOのIlan Samish博士に取材を行った。

◆ 社会へのインパクトを求め、研究者から事業家へ


 長年ワイツマン科学研究所で、計算構造生物学研究のパイオニアとして研究分野を牽引してきたSamish博士は、2016年に自身の研究領域を事業に昇華させ、砂糖問題への挑戦を始めた。


 「研究界では、タンパク質設計の議論は活発に行われるものの、設計から開発までの実装がされてませんでした。自分の研究分野での知見を活かし、社会にもっとインパクトのあることをしたいと思うようになりました。」と同氏は語る。


 構造生物学分野のノーベル賞受賞者であるMichael Levitt教授を科学諮問委員会に、グローバル・フードバリューチェーンにおける長年の第一人者であるRichard Greubel氏を取締役会に招き、さらに5人の博士号取得者であるエンジニア、薬剤師、イスラエルの製薬会社Teva Pharmaceuticalの元CEOなど複数の専門家による多才なチームを築き、甘味タンパク質の研究開発事業へ踏み出した。

図3. Amai Proteinsのチーム (同社提供)

◆ 自然からのインスピレーション


 Amaiの甘味料は、赤道に沿って生育する多種多様な植物からインスピレーションを得ている。これらの植物は、砂糖の3,000倍の甘さを持つ健康的な甘味タンパク質を含むが、加熱時などにこのタンパク質は破壊されてしまう。同社のコアコンピタンスは、天然の甘味タンパク質の構造を3次元解析し、加熱時に破壊される個所のアミノ酸組成を変えることにより、加熱時でも安定する甘味タンパク質を設計・開発する独自の発酵技術だ。


 「我々は”健康的”と”甘味”を世界で初めて結びつけました。弊社の甘味タンパク質は、他の甘味料と同じように舌の甘味受容体によって感知されますが、微生物や肝臓、腎臓との相互作用は全くありません。他のタンパク質と同様に、アミノ酸に分解され、吸収されます。つまり、砂糖のような甘味がありながら、タンパク質として体内で消化されるのです。(同氏)」


 アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)への承認申請の後、2022年に最初の甘味タンパク質を市場に投入し、その後も様々な食品・飲料向けの新規タンパク質を開発していくとのことだ。

図4. 同社が開発するタンパク質の模型と製品 (同社提供)

◆ 人類のため、環境のため


 世界保健機関(WHO)は、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの原因が共通し、生活習慣の改善により予防可能な疾患をまとめて「非感染性疾患(NCD)」と位置付けている。そして、その内最も高い割合を占めるのが、肥満に関連する代謝性疾患や心血管疾患とわかっており、主な原因が砂糖の過剰摂取とされている。


 「我々は、病気になる前の予防策として砂糖消費の削減を目指します。弊社の甘味タンパク質は1グラムで砂糖10kgの分の甘さがあり、既存の食品・飲料に含まれる35~80%の砂糖を代替することができます。最大で90%のコスト削減に繋がると予測します。」と同氏は述べた。


 さらに、「工場を新設することなく、ローカルな既存の食品施設で、砂糖よりも安価で生産することができます。砂糖生産における、輸送によるCO2排出、農薬やサトウキビ焼却による汚染を削減することができます。」と環境の持続可能性を言及し、同氏は話を締めくくった。

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 日本は甘味料の分野で研究開発とイノベーションの長い歴史と実績を持つ先導国です。世界の糖尿病市場の60%が東南アジアに広がると言われ、その入り口として、日本は最も重要なパートナー国になると考えています。さらに、高齢化社会や糖尿病・メタボリックシンドロームなどの問題が広がる中で、日本の皆さまが東南アジアの中で最初に弊社の健康的な甘味タンパク質を味わうことができることを望んでいます。日本企業の皆さまとコラボレーションができることを心から楽しみにしております。

Ilan Samish


◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

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◆ 12月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。


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