【スタートアップ深層】Voiceitt - 言語障害を抱える人々向けの音声AIアシスタント
毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。
今回は、Voiceitt 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。
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※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年12月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。
Voiceitt(https://voiceitt.com/)
Mr. Danny Weissberg(CEO)
◆ 言語障害を抱える人々のためにAIを活用
イスラエルを拠点とするVoiceitt社(以下:Voiceitt)は、障害などの理由で発話が上手くいかない人を支援する自動音声認識のAI技術を開発する。同社が開発するモバイルアプリケーション「Talkitt」は、発話者の固有の音声パターンを認識し、リアルタイムで聞き取りやすい音声や、文字に変換してくれる。
「自分では話せない人たちに”声”を与える」をミッションに掲げるVoiceittの共同創設者兼CEOであるDanny Weissberg氏に取材を行った。
◆ 祖母の病気がきっかけ
10年ほど前、Danny氏の祖母が脳卒中を患い、はっきり話すことができなくなったことが創業のきっかけという。元々ハイテク業界で10年以上の経験を持つ同氏だが、その頃はまだ深層学習や機械学習などのAI技術が繁栄期を迎える前で、業界には懐疑的な見方もあった。しかし、8年前に当時ヘブライ大学の博士課程で機械学習/音声認識の研究をしていた共同創業者のStas Tiomkin氏と出会い、2人はその実現性・可能性を信じプロダクト開発に着手した。
図1. 様々な病気が言語障害を引き起こす原因となり得る (同社提供)
◆ 蓄積された大規模なデータセットと多言語対応機能
Voiceittが開発する「Talkitt」と呼ばれるモバイルアプリケーションは、アプリに対して話しかけることで発話者の癖を学習し、自動通訳の発話支援をする。また、様々な音声コントロールのデバイスと連携することで、スマート家電も操作できる。さらに、スマホなどを持つことのできない運動機能障害を抱える人々向けのウェアラブルデバイスも提供している。
「アイ・トラッキングを始めとしたコミュニケーション支援ツールはこれまでも存在してきました。しかし、我々がもたらすイノベーションは、史上初めて、言語障害を抱える方々に”本人の声”を与えることを実現したことです。」と同氏は述べる。発話者固有の発音パターンを元に、パーソナライズされたスピーチモデルを構築するため、他言語対応も容易に可能であり、既に英語圏、スペイン語圏、そして中国語圏にも進出している。
「弊社の強みは、8年以上のアルゴリズム開発を通じて集められた数百万ものデータセットです。非定型のボイスサンプルに特化したデータをこれほど集積している企業は他にいません。我々はこれからも進化し続けます。(同氏)」
図2. タブレット上でのインストラクション画面(同社提供)
◆ ユーザーと共にプロダクトを進化させ、有機的な連鎖を広げたい
同社は現在ベータ版テストに着手しており、2021年の上半期に最初のプロダクトをリリースする予定だ。SDK(ソフトウェアデベロップメントキット)の提供からデバイスへの導入サポートまでを手がけ、スマート家電、高齢者の介護向けロボットなど、音声コンポーネントのあるあらゆるデバイスへの対応も可能だ。
「弊社は、ユーザーの方々と共にプロダクトを作ってきました。ベータ版アプリを使うユーザーが増える度に、そのデータは蓄積されます。ユーザーの方々は、自分たちもこの活動の発展とコミュニティの拡大に貢献しているという感覚を持ってくれています。我々も彼らに寄り添い、価値あるフィードバックをもらいながらプロダクトの改善を続けています。(同氏)」
超高齢社会に突入した日本にとっても、明瞭な言葉を発することが困難な人々が増えることが予想される。さらに、IoT時代において”音声”によるインターフェース、および最適化された製品やサービスが今後増え続ける中で、同社はスマートホームデバイスとの連携によって、言語障害と運動障害を持つ人々に独立性と生活の質の新しい側面を提供することを目指す。
CEOから日本企業に向けたメッセージ
我々はソーシャル・イノベーションの力を信じています。社会的に意義のある課題解決を、持続的なビジネスモデルによって実現する。弊社の事業は、本当に多くの人々の人生を変えています。音声・言語認識の市場は拡大し続けており、その中で弊社は非定型の音声認識におけるマーケットリーダーになれると確信しています。テクノロジーの先端を行く日本企業の皆さまとコラボレーションできることを心より楽しみにしております。
− Danny Weissberg 氏
◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。
◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら→
◆ 12月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。
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