【スタートアップ深層】Bosco - 子供のプライバシーを重視しコントロールしないモニタリングアプリ

July 6, 2020

 毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。 

 

 今回は、Bosco 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。 【後編:More Foods - 主要アレルゲンを含まず、味も「肉にそっくり」な代替肉食品】はこちら

 

 

※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年7月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

Bosco(https://www.boscoapp.com/

Mr. Enon Landenberg(Founder)

 

 

◆ 子供のプライバシーを最優先し、コントロールするのではなく「見守る」アプリ

 

 イスラエルのテルアビブに拠点を置くBosco 社(以 下:Bosco)は、子供の様子をスマートフォン経由で モニタリングするアプリケーションを開発している。 同社が目指すのは、子供を監視し、コントロールするの ではなく、子供の身体的および精神的な安全が保たれて いるか、AI を通して見守り、必要に応じてインサイトを 親に通知するサービスだ。同社のアプリは、子供の位置 情報やSNS の利用履歴、通話の内容などをモニターするが、機能を制限したり、親を含む第三者に 内容を開示したりすることはない。

 

 インターネットで幅広い情報へアクセスすることが子供にとって当たり前となった現代において、 子供の健康的な成長をどのように支えていくことができるか、同社の創業者であり3 児の父親でもあ るEnon Landenberg 氏に取材を行った。

◆ 自身が「3 児の親」として直面した課題がイノベーションのきっかけとなった

 

 Bosco 創業の背景には、シリアルアントレプレナーであるEnon 氏が、実際に子育てをする中で感 じた課題があった。「子供たちが親に助けを求めているとき、親は子供たちに関する十分な量の情報 を持っていないということに気がつきました」と同氏は自身の体験を振り返って述べた。

 

 「既存のサービスのほとんどがペアレントコントロールによって不適切な情報をブロックすること に主眼を置いていました。しかし、インターネットが子供の日常生活にも浸透している現代におい て、情報をブロックすれば安全だという考え方だけでは不十分だと思います。しかし、子供がどのよ うな状況にあるかを親に伝えるサービスは、創業当時はほとんど無く、この市場にビジネスチャンス を感じました(同氏)」

図1. Bosco App を用いたモニタリングの様子(同社HP より)

 

◆ 情報を遮断するのではなく、子育てに役立つ「インサイト」を親に届ける

 

 子供が日々接する膨大な情報のすべてを親が一手に把握することは困難だ。そこで同社は、AI を 活用することで、子育てにおいて重要だと考えられる情報が必要なタイミングで親に届くようにし た。例えば、子供の位置情報から、「学校を出た」「習い事の教室についた」「家に着いた」といっ た出来事に関する通知を親にプッシュする。加えて、AI が子供の行動範囲を学習することで、誘拐 されていないか、といった異常検知を行うことも可能だ。

 

 さらに、子供が他者とのコミュニケーションの中で危険な状況に陥っていないか、あるいは、傷つ いたり恐怖を感じたりしていないか、といった情報を親に届けることができる。例えば、SNS 上で 自分の顔写真を見知らぬ人に送っていた場合、「あなたの子供が、個人情報を危険に晒している可能 性があります」のような通知が親に届く。「弊社のアプリが、送信すること自体をブロックしたり、 送った内容をそのまま親に通知したりすることはありません。その代わり、親が子供に対して、何が 危険で何が安全かを伝えるきっかけを作りたいと考えています」とEnon 氏は強調した。

◆ AI を駆使して、子供の声のトーンから情動を読み解く

 

 Bosco が開発するAI の強みの1 つに、子供の話し声から、本人の喜怒哀楽や恐怖を感じているか どうかを高精度に推定できる機能がある。用途としては、子供が他者と通話する中で恐怖反応を示し ていた場合、通話内容を除去した上で、親に危険な兆候であることを知らせることができる。

 

 一般的に、子供は身体的な変化が激しく、声帯などの器官の成長に伴って、声質も変化していく。 Enon 氏によると、一般的な声帯モデルを当てはめたAI からみると、約3ヶ月で子供の声は別人に なってしまうとのこと。そこで同社は、子供の声を一定期間ごとに再学習する機械学習モデルを開発 し、人種や育った文化圏によらず、子供の話し声を解析することを可能にした。

 

◆ 日本市場へのローカライゼーションは最短2 週間で可能

 

 Bosco は、創業当初からグローバルな市場展開を視野に開発を行ってきた。「他言語への翻訳な ど、ローカライゼーションに必要となる作業が行いやすいよう、設計段階から意識して開発を行って きました。その結果、対応している言語は既に12 に上り、近々日本語も対応予定です。また、現地 スタッフのトレーニング等を含めたローカライゼーションに関しては、最短2 週間で行うことができ ます」とEnon 氏は述べる。

 

 日本市場に関しては、世界と比較しても際立った特徴があると言う。「日本は経済規模が大きいだ けでなく、人々が日常的に利用している技術の水準がとても高いと思います。ハイテク製品であって も素早く順応することができると感じました。さらに。日本人は良いサービスに対して対価を払うこ とを惜しまない良い国民性があると思います(同氏)」

 

 一方で、日本市場に参入するにあたって障壁もある。同氏は「マーケティング戦略などは、文化の 違いを考慮する必要があります。日本人の顧客を多く持ち、ニーズをよく把握している日本企業と協 業することを通して日本市場に進出したいと考えています」という言葉で取材を締め括った。

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 私たちイスラエル人には、リスクをあえて引き受け、困難な状況 にも立ち向かっていける国民性があります。失敗したとしても、そ の失敗から学んでまた新たに動き始めればよいのです。私たちは、 とにかく素早く動くことが得意ですが、その結果として、日本人の ように優れた品質を生み出すことは苦手かもしれません。しかし、 そこにコラボレーションの価値があると思います。

− Enon Landenberg 氏

 

◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら

◆ 7月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。

 

【後編:More Foods - 主要アレルゲンを含まず、味も「肉にそっくり」な代替肉食品】はこちら

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