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【スタートアップ深層】Melodea - 次世代の植物由来新素材CNCを独自の技術で開発・製造

 毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。


 今回は、Melodea 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。

【前編:MyPrivacy - オールインワンのスマートフォン向けプライバシー管理アプリを開発】はこちら


※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2021年3月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

 


Melodea(https://melodea.eu/

Mr. Shaul Lapidot(CEO)


◆ 次世代の植物由来新素材でグローバル環境問題に挑む


Melodea社(以下: Melodea)は、世界中で拡大するプラスチックごみ問題の対応策として、環境に優しい植物由来新素材CNC(セルロースナノクリスタル)を独自の特許技術で生産する。


世界中のプラスチックの年間生産は約3.8億トンに上り、その内リサイクル率は9%ほどで、約40%が埋め立て地に行き、約30%が海などの環境へ流出している。生産されたプラスチックのおよそ40%はパッケージ・包装の用途に使われるが、包装材料にとって重要な特性であるバリア性(酸素・油成分・水蒸気に対する)はプラスチックやアルミ箔に頼っている現状だ。しかし、政府・企業・消費者の環境問題への意識の高まりと共に、グローバル・パッケージ市場は持続可能なパッケージソリューションを求めている。


今回は、従来の化石由来プラスチックの代替として有望視される次世代CNC素材を生産する同社の共同創業者兼CEOのShaul Lapidot氏に取材を行った。

 

◆ 新素材CNCの未来を切り拓く


MelodeaのCNC製造技術は、イスラエルのヘブライ大学と欧州委員会(European Commission)のバイオマス新素材を開発する共同プロジェクトから生まれた。ヘブライ大学農学部の研究所を運営する同社取締役のOded Shoseyov教授は先駆的な材料技術者として知られる。同研究所で植物分子生物学の博士課程に取り組んでいたLapidot氏は、スウェーデン出身・複合材料専門家のTord Gustafsson氏と共に2009年に同プロジェクトに参画し、3者はここで開発したナノバイオテクノロジーの特許技術を産業応用するべく同社を創立した。


「CNCは全ての植物に含まれるセルロース繊維に由来する素材で、自然界が何十億年もの進化の過程で生み出したナノ材料です。重量ベースで鋼の約10倍の強度があり、弊社は我々の研究室で開発された特許技術でCNCの開発と製造を行っています。」とLapidot氏は述べる。


同社はイスラエル含む数ヶ国の拠点でCNCの生産を行い、パートナーと協力して様々な用途開発をする。一例として、CNCを3%の濃度で水と混ぜ合わせると、CNCは結晶に変わり、その溶液を紙、プラスチック、コンクリートなどの表面に適用すると、水が蒸発するにつれて、結晶が自己集合して強力な透明フィルムを形成する。この手法は油や酸素に対するバリア性も作り、100%リサイクル可能なパッケージソリューションを可能にする。既に、スウェーデンのHolmen社、ブラジルのKlabin 社とパートナー提携し、CNCベースのバイオパッケージを工業規模で生産する。


「パッケージソリューション以外にも、繊維製品、塗料添加剤、3Dバイオプリンティング、プリンテッド・エレクトロニクス、LEDライトなど、様々な用途に広がる可能性をCNCは秘めています。将来最も有望なグリーンソリューションの一つとして注目され、弊社はCNC製造のパイオニアとして研究段階から事業化まで関わる体制を取っています。」と同氏は述べた。

図1. CNCの構造(同社提供)

 

循環型経済を実現するためのCNC素材


同社は、主に製紙産業におけるパッケージソリューション向けバリアコーティング剤としてのCNC活用に焦点を当て、製紙・特殊紙メーカーやコンバーター(加工業者)などとの連携を強めてきたが、今後グローバルに製造拠点を拡大し、低コストの様々な次世代アプリケーション開発へ向けた戦略的パートナーシップも築いていく方針だ。


「弊社は、安価で再生可能な植物由来CNCこそが、化石由来素材の効果的な代替になり得ると考えています。自然界で最も豊富な素材であるセルロース繊維に由来するCNCは、様々な業界に持続可能性をもたらし、循環型経済の実現に重要な役割を担っていくと信じています。」と同氏は語る。


現在日本【スタートアップ深層】melodea-次世代の植物由来新素材cncを独自の技術で開発・製造には、CNC素材を扱う機関はまだ少ないが、Society 5.0を掲げる日本社会にとっても、バイオ素材を活用した自動車部品やロボットの製造など次世代社会の基盤となる可能性を持つCNCの拡大に注目が集まる。

 

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 日本は環境への意識が高く、ナノセルロースの研究と産業応用を産学官連携で牽引してきました。最先端技術を取り込みイノベーションを促進する姿勢に敬意を持っており、弊社が製品を市場投入を開始するこのタイミングで、日本企業とコラボレーションを実現することを強く望んでいます。

共に持続可能な循環型社会を実現しましょう。

− Shaul Lapidot氏




◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら

◆ 3月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。


【後編:Melodea - 次世代の植物由来新素材CNCを独自の技術で開発・製造】はこちら

 


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