イスラエル人の買収交渉の特徴や投資時に押さえておきたいポイント【イスラエルとの縁 -6-】

August 21, 2017

 

このブログの読者には、イスラエル企業の買収や投資に関して特に興味があるという方が多いのではないだろうか。

イスラエル入りした私は、バイバーで法務責任者として様々な業務に携わってきた。そこで、イスラエル企業の買収で知っておくべき心構えやテクニカルな注意点があることを身をもって学んだ。

今日はそうしたイスラエル人の買収交渉の特徴や投資時に押さえておきたいポイントをご紹介したい。手前味噌ながら、現地で仕事をしないと見えてこない部分なので、今後投資を検討される方のお役に立てる情報ではないかと思う。

 

ユニークで大胆なイスラエル人の買収交渉術

私は前職で多くのクロスボーダーの企業買収、投資、合弁会社設立などに携わり、その契約交渉をリードしてきた。国によって各企業の交渉スタイルは異なるとはいえ、度肝を抜かれるような違いを見る事はなかった。

バイバー(Viber)の買収をした際に驚いた事については以前ブログで触れたが、とにかくイスラエル企業の買収スタイルはユニークだ。

イスラエルで何社も投資をしたわけではないので一概には言えないが、驚かされることの多い買収交渉であったので、振り返って取り上げたい。

2015年の3月から8月くらいにかけて、バイバーでイスラエル国内の企業の買収を検討した。

日本企業の立場でイスラエル企業へ投資する経験は数多くの人がやってきたと思うが、イスラエル企業の人間として国内の別企業と交渉する機会に恵まれたことはラッキーだったと思う。なお、実際の案件はTechCrunchで記事にもなっている。
Messaging App Viber Buys Nextpeer To Add Social Features To Its Gaming Portal | TechCrunch

何社かと交渉したが、バイバーの買収交渉時と同様に、とにかくプロダクトと技術のデューデリジェンスには時間をかけた。

納得のいくまで何度も先方プロダクトのコーディングを見に行き、実際にインテグレートするにあたってどれだけ時間と手間が必要かをCOOとCTOが自ら丹念に調べあげていた。

そしてどんなにバイバーのメッセージサービスと互換性がよく面白いプロダクトであれ、改良に時間を要する場合、エンジニアの腕がよくない場合、そして技術の拡散性がないと感じる場合には、「いらない」とはっきり返事してしまうのである。

そう簡単にはプライシングやバリュエーションの話まで行き着かないのだ。経営陣にプロダクトに対する深い理解と技術設計の勘の鋭さがないとこうはならない。彼らの熱意と自社プロダクトに対する姿勢には何度も驚かされた。

さて、いい会社だと決めたら次は金額交渉のフェーズだ。強気なイスラエル人らしさは金額交渉の場でも発揮されていて、売り手はとにかくふっかけるし、買い手の値引き交渉も大胆だ。

具体的な金額は明かさないが、合理性のある数字を提示し落とし所を考えながら交渉する、というお行儀の良い常識からはかけ離れた数字のやりとりが続いた。

実は、このとき売り手からの初めの提示額に対して著しく低い金額で跳ね返したのには今でもしっくりきていない。そして最終的に合意した金額が提示額からかなり乖離していたのも、それまで経験したことがないことで度肝を抜かれた。

私自身、企業買収の担当、そして弁護士としての過去の経験からも値引き交渉に一定の抵抗感を持っていたことは認めるが、それにしても大雑把で、恥も遠慮もないと驚いたものだ。

実際、提示した金額の25%程度で買収された企業で、一年で社員が全員いなくなった、なんて話も少なくないようだ。

いまや私も彼らの感覚に慣れたものだが、日本企業の常識は通用しない世界なので、今後そうした機会がある人は心しておいたほうがいい。

 

イスラエル企業へ投資・買収する際の注意点

イスラエル企業への投資や買収にあたっては、他にも事前に押さえておくべき注意点がある。実際の経験から、事前に知らないと後々大変な思いをすると感じることなので、ここでご紹介しておきたい。

 

(1)知的財産の利用にかかる制限

まずはじめに、買収後に知的財産の国外への持ち出しやその権利を用いた海外での製造を考えている場合に直面し得る弊害について話したい。

イスラエルではスタートアップのR&Dに対し、政府が手厚い支援プログラムを用意している。

その中でOffice of the Chief Scientist (OCS)に支援を受けている会社も多いが、これはスタートアップの成長促進を強く後押ししている反面、OCSの規則に準ずるという制約も生み出している。

これが将来の買い手側に多大な影響を及ぼすことになるのである。OCSの規則の中で、OCSの資金により開発された技術ノウハウやそこから派生したものについては、委員会の許諾なくイスラエル国外へ持ち出す事が禁止されているのである。

これはM&Aなどで必ずぶつかる問題であり、私もある案件でずいぶん頭を悩まされたが、最終的にはそれ相応の対価を払うことやその他の手段で乗り切る事はできる。

もし、このあたりでどう対処していいかコンサルテーションが必要であれば、Jakoreにご連絡願いたい。

 

(2)税金の高さ

次に税金、キャピタルゲイン税や所得税の高さについてである。

トランザクションや条件によって税率も異なるため、何%かというのは一概に言えないが、とにかくイスラエルでは税金が高い!

所得税については、高収入である場合、実に50%近くにもなる。要するに半分は税金として納めなくてはならないのである。

このため、イスラエルでは買収後の報酬をキャッシュで受取るのを嫌がる人が多い。また、キャピタルゲインに該当せず所得税の課税対象と解釈されるような報酬制度も同様に嫌がられるだろう。

こうした場合の対処方法として、所得税とキャピタルゲイン税の差額分を補填してあげるような工夫が必要になることもある。このあたりの対処方法についても、お困りであれば、Jakoreへお問い合わせ願いたい。

 

(3)弁護士費用

最後に、弁護士費用である。

これは問題と言うより、イスラエルの魅力的な点である。非常に安価なわりに質がいいのだ。もちろん良い事務所と先生を選ぶ必要がある。

私もバイバーの法務責任者として、現地で10社以上の法律事務所と実際に取引を行ったが、最後にお付き合いしていた2社は質が米国の事務所水準で、かつ費用はその半額であった。

今でもそことは濃密なお付き合いをしている。そこには、米国や英国のトップロースクールを卒業し、トップローファームで何年も経験を積んできているM&A, VC, 投資専門の弁護士が所属している。

彼等はイスラエルに住みたいがためにイスラエル水準に報酬額を落として働いているのである。イスラエルで彼等を頼れるとなれば心強いはずだ。

本当に信頼できる事務所なので、現地のいい事務所と弁護士の紹介が必要であればご連絡願いたい。

 

イスラエル企業への投資は魅力的

今日は買収交渉のプロセスにおけるイスラエル人らしい着目点や金額交渉の大胆さ、買収時の注意点についていくつかご紹介してきた。

なんだか少し難しそうな相手だと感じられた方もいるかもしれない。しかし、実際にイスラエルでの投資や買収は魅力的である。

上記で触れたようにトランザクションフィーが安いこともあるが、バリュエーション自体がまだまだ異常な跳ね上がり方をしていない。

私は以前、Acqui-hire(買収による人材獲得)に関して、米国西海岸とイスラエルとを分析して比較したことがある。買収額をエンジニア数で割るというわりと単純な試算ではあるが、明らかに一人当たりの単価が違っていた。

買収後、マネジメントや事業統合を円滑に進められるかは別の課題として存在しているものの、面白いイスラエル企業への投資や買収へ踏み出したいと考えるのは当然である。

具体的にコトを進めるには、今日ご紹介した内容以外にも多くの留意点があり現地でのネットワークが物言う部分も出てくるが、まずは検討時の参考になれば幸いである。

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