【スタートアップ深層】Water.IO - 消費者と生産者をダイレクトに繋ぐ「インターネット・オブ・パッケージング」
毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。
今回は、Water.IO 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。 【前編:Salamandra Zone - 空気中の有毒ガス、ウィルスを分子レベルで分解】はこちら
※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年9月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。
Water.IO(https://www.water-io.com/)
Mr. Kobi Bentkovski(CEOMicrobiology R&D Strategist)
◆ 消費者と生産者をダイレクトに繋ぐ「インターネット・オブ・パッケージング」
Water.IO は、ボトル容器と IoT センサーを組み合わせ ることで、使用状況をリアルタイムで確認できる製品を 世界で初めて開発した。同社の技術を用いることで、ペ ットボトル飲料やサプリメントの残量や摂取頻度をモニ タリングすることが可能になる。
同社は、商品のパッケージをインターネットに接続する技術を開発し、IoT の発展形の 1 つとして「インター ネット・オブ・パッケージング(IoP)」と名付けた。IoP の活用によって、商品を購入した後、消 費者がその商品をどのように使っているかをリアルタイムで把握することが可能となった。IoP から 得られるデータは、商品の消費体験を最適化するだけでなく、新たな需要を発掘する可能性に満ち溢 れているという。同社は、飲料大手の Danone 社や製薬の Bayer 社を顧客に持ち、欧州を中心に製 品を展開している。2020 年中に新商品を複数発表予定で、米国市場への進出を目指している。
今回は、同社の共同創業者であり現 CEO でもある Kobi Bentkovski 氏に取材を行った。
◆ 水分補給のタイミングを知らせ、脱水症を防ぐ
Water.IO の原点には、水分補給が十分にできず脱水症に陥ってしまうという課題があった。調査 によると、米国では年齢によらず過半数の人々が日常的に水分不足に陥っており、心身の健康がリスクに晒されている 。Kobi Bentkovski 氏も、自身の幼い娘が脱水症に苦しめられていたことがきっかけとなり、同社の創業に至ったという。同氏は「娘は、十分な量の水を飲んでいるかどうか、自分 では判断できていませんでした。この経験から、水分補給が必要なタイミングを直感的に分かりやす くリマインドするボトルキャップを考えつきました」と、製品の着想を得た経緯を述べた。
図1. 専用アプリと連携し、摂取の タイミングを通知(Credit: Water.IO)
◆ 購入後の消費者行動を「見える化」
現在、同社が開発するキャップ型 IoP センサーは、ペットボト ル用とサプリメント用の 2 つに分類される。前者では、ペットボ トル飲料のキャップとして装着することで、いつ、どの程度飲ん だか、残量はどのくらいかをモニタリングし、水分補給が必要と 考えられるタイミングになると、キャップが点滅して持ち主に知 らせてくれる。スマートフォンの専用アプリでも確認できる。
また、サプリメント用のボトルキャップでも同様に、サプリメントごとに最適な摂取タイミングや 量を設定し、通知することが可能だ。「モニタリングだけでなく、一人ひとりにとって最適な消費行 動をアドバイスできる IoP は、究極のパーソナライゼーションを実現するツールです(同氏)」。
◆ 消費者がリアル店舗での買い物を避ける時代に、新たなマーケティング戦略を
新型コロナウィルスの拡大に伴い、Water.IO に対する問い合わせが増加している。小売企業や飲 料品のブランドは、消費者への新たなアプローチ戦略を模索中だと Kobi Bentkovski 氏は考えてい る。「リアル店舗での接点が減少し、新たなマーケティング戦略が必要とされています。弊社の製品 を活用すれば、例えばサプリメント容器が空になる前に再注文を案内したり、特別な割引オファーを 提示したりと、これまでにない方法で消費者にアプローチすることが可能になります(同氏)。」
CEOから日本企業に向けたメッセージ
イノベーションを起こす準備はできていますか?イノベーション には、マインドセットだけでなく組織構造の面でも準備が整ってい ることが不可欠です。テクノロジーへの適応が早く、プライバシー の問題にも敏感な日本市場は、Water.IO にとってユニークな位置を 占めており、日本企業と協業できる日を楽しみにしています。
− Kobi Bentkovski 氏
◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。
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◆ 9月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。
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