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【スタートアップ深層】Sonovia - 独自のコーティング技術で新型コロナウィルスの90%以上を無効化

 毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。

 今回は、Sonovia 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。 【前編:SparkBeyond - あらゆるデータを自動解析しビジネスに役立てるAIプラットフォーム】こちら

※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年8月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

 
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Sonovia(https://www.sonoviatech.com/)

Dr. Jason Migdal(Microbiology R&D Strategist

◆ 独自のコーティング技術で、COVID-19 を 90%以上無効化することに成功

 Sonovia は、高性能の抗菌・抗ウィルスコーティングを 繊維に施すことができる独自の技術を開発した。同社のコー ティングが施された布が、新型コロナウィルスを 90%の割 合で無力化したという試験結果1が報告されている。また同 社は、あらゆる種類の布地に対して、繊維を傷めず、環境負 荷が低い製法を実現。超音波によって発生した微細な気泡を 用いて、材料を直接繊維にコーティングするため、中間材料の薬品や化合物が不要となった。


 2019 年、同社は EU が主導する研究開発プログラムである「Horizon 2020」から、240 万ユー ロ(およそ 3 億円)の助成金を受けている。また、2020 年内には米 NASDAQ への上場を目指して いるという。今回は、同社で技術開発に携わる傍ら、事業のプロモーションにも従事している Jason Migdal 氏に取材を行った。

 

◆ 超音波振動を用いたコーティングで環境への負荷も低下

 イスラエルのバル=イラン大学で研究・開発が行われてきたソノケミカルコー ティング技術を背景に、Sonovia は創業した。超音波を用いた化学反応のこと を一般に「ソノケミカル反応」と言い、同社はこの反応を応用し、抗菌・抗ウィ ルス効果を持つ材料を織物にコーティングしている。ソノケミカル反応を応用し た技術は同社創業以前から存在していた。一方で、繊維とナノサイズのコーティング材の粒子を結びつける技術には、他社が簡単には追従できない独自性が詰まっていると Jason Migdal 氏は述べた。超音波を用いたコーティングの強みは、 超音波振動によって材料の粒子が繊維の間に細かく付着するため、高密度かつ高 耐久性を実現できる点にある。「弊社のコーティングは、洗濯して繰り返し使うことができます。65 回以上洗っても効果が持続し、1 年間の保証つきです(同氏)。」さらに、コーティング剤を溶 かすための溶媒が不要になるため、環境負荷が低減される点も特徴だ。同社によると、通常の製法と 比較して、コーティングの最終工程で必要となる化学物質を 50%減少させたという。

図1. Bosco App を用いたモニタリングの様子(同社HP より)

図1. SonoMask(同社提供)

 

◆ COVID-19 の拡大を予期し、約 3 ヶ月でマスクの開発から販売まで実現

 Sonovia は現在、同社のコーティングが施されたマスク「SonoMask」を、医療従事者および一般 市民向けに販売している(図 1)。2020 年 1 月、新型コロナウィルスの流行の兆しを察知した同社 は、マスクの開発・生産へと素早く舵を切り、わずか 3 ヶ月で販売を開始した。

 「当時、マスクは弊社の製品ラインナップにはありませんでし た。しかし、マスクには大きな市場機会があると考え、開発から 生産まで一挙に実現しました。EU 認可の研究所が行なった試験 によれば、COVID-19 に対する SonoMask の除去率は 99%に達 する見込みです。現在では、およそ 1 日 2 万枚製造することが可 能です」と Jason Migdal 氏は述べた。

 

◆ 高まる抗菌・滅菌テクノロジーへの需要に応える

 Sonovia は現在、「SonoMask」をはじめとした消費者向けの製品を販売しているが、今後は事業 者向けに、抗菌・抗ウィルスコーティング技術を活用したソリューションを提供していく考えだ。例 えば、多くの人が使う公共機関の椅子のシートを、定期的かつ自動的に滅菌処理する、といったサー ビスは需要が高まると Jason Migdal 氏は考えている。「いわゆるニューノーマルでは、こういった 抗菌・滅菌テクノロジーに対する需要が高まると考えています。弊社のコーティング技術だけでな く、紫外線除菌器(UVC ライト)との組み合わせによって、室内の菌やウィルスを除去していくこ とが大切だと考えています。」

 同社は現在、0.1 マイクロメートルという、ウィルスの大きさよりも目の細かい新しい繊維の開発 を行っている。同氏は「私たちは、菌やウィルスを除去するだけでなく、洗うことで繰り返し使える フェイスマスクという新しい製品カテゴリーを生み出したいと考えています」と展望を述べ、インタ ビューを締め括った。

 
Enon Landenberg 氏

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 歴史的にも特異な状況下において、Sonovia は新たな抗ウィルス ソリューションを提案しています。事業者向け、および交通機関向 けの次世代のフェイスマスクを皮切りに、日本の企業が自信と安全 性を取り戻すお手伝いができればと考えています。弊社の技術に は、公共福祉と収益性の両者を向上させる応用可能性が無限に広が っています。

− Joshua Hershcovici 氏

 

◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら

◆ 8月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。

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