【スタートアップ深層】Enroute - 電車やバスの乗車時に買い物をすると運賃が値引きに
毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。
今回は、Enroute 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。【前編:Sternum - IoT デバイスを内側から保護する「オンデバイスセキュリティ」】はこちら
※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年11月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。
Enroute(https://www.enroute.tech/)
Mr. Aviv Frenkel(CEO)
モビリティと e コマースをかけあわせ、かつてない顧客体験を生み出す
Enroute は、鉄道やバスなどの乗車サービスと e コマ ースを組み合わせ、乗客のネットショッピング体験を作 り変えようとしている。同社が開発する SDK(ソフトウ ェアデベロップメントキット)をインストールしたアプ リ上で買い物をすることで、乗客は運賃の値引きといっ た特典を得ることができる。
一方、交通機関にとっても、新たな収益源になるだけ でなく、沿線に構える商店と協力してローカルエコノミーを育てることにつながる。乗客、交通機 関、そして店舗の三者が win/win/win となるサービスを開発する同社 CEO である Aviv Frenkel 氏 に取材を行った。
電車やバスの乗車中に買い物をすると、運賃が値引きされる仕組みを考案
Enroute の CEO を務める Aviv Frenkel 氏は、スタートアップ大国と称されるイスラエルの起業家 の中でも異色の経歴を持つ。徴兵制度では軍が放送するラジオ局の DJ を務めた後、テレビ局でキャ リアを積んだ。しかし、仕事の中で様々なスタートアップ企業に出会い、起業への情熱が生まれた。
同社が開発したサービスは、電車やバスに乗っている間、同社と提携を結んでいるブランドや店舗 のアプリでネットショッピングを行うと、次回以降の運賃が割引されるポイントが得られるというも のだ。同氏によると、イギリスではネットショッピングのおよそ 20%が通勤時に行われているとい う。「現在、鉄道会社やバス会社は、乗客が車内でどのように過ごしているか把握できていません。 しかし、そこでは毎日莫大な金額がやり取りされているのです」と同氏は述べた。
鉄道会社やバス会社にとって新たな収益源となる
Enroute のサービスを活用することで、交通機関は乗客とデジ タル面での新たな顧客接点を持つことができる。Aviv Frenkel 氏 によると、運賃を値引きする変わりに、乗客が購入した商品の代 金の一部が交通機関に還元されるモデルや、顧客データを解析す ることで得られる知見を事業に活かすといった形で、新たな収益 源を創り出すことができるという。
「例えば、降車駅にある店舗の商品をおすすめとして提示した り、Free Wi-fi の接続画面に広告を掲載したりする新規サービス が考えられます(同氏。)
また、同社が開発した「インベントリーシステム」を用いることで、店舗の商品在庫データを活用 することが可能になる。「気になったアイテムが自分の降車駅の近くの店舗にある、と分かれば、購 買につながる可能性が高まると考えています」と Aviv Frenkel 氏は述べた。
2020 年はシンガポールやスペインのマドリードで現地企業と協業予定
Enroute は昨年、ドイツ最大の鉄道会社であるドイツ鉄道とパイロットプロジェクトを実施し、乗 客および鉄道会社からの強い手応えを得た。2020 年には、シンガポールやマドリードの交通機関と も協業する予定だ。また、同社は 2019 年、大阪で開催された「Startupbootcamp Scale Osaka」 というアクセラレーションプログラムに採択された。同プログラムの協力企業には JR 西日本イノベ ーションズや、阪急電鉄株式会社が名を連ねている。「日本人は「ポイント」を貯めることに敏感な 人が多く、多種多様なポイントサービスが提供されていると聞きます。弊社のソリューションは、日 本人に愛されるサービスへと成長する可能性を感じています」と Aviv Frenkel 氏は述べ、取材を締 め括った。
CEOから日本企業に向けたメッセージ
“Never waste a big crisis.(大きな脅威を無駄にしてはいけな い)”という言葉を意識しています。現在、私たちに降りかかってい る脅威を、イノベーションの源泉にできるはずです。私たちのソリ ューションは、コスト削減よりも売上増大を目標としています。興 味を持たれた企業様とはぜひお話ししたいです。
− CEO の Aviv Frenkel 氏
◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。
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◆ 11月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。
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