【IVCレポート】「スケールアップ・ネーション」を実現したイスラエルが成長を続けるためには
2019年のデータは、イスラエルのハイテク産業が成熟しつつあることを示唆している。誕生したばかりのスタートアップよりも、大きく成長を遂げた企業にリソースが集中する傾向が見られ、イノベーションの構造に変化が見られる。イスラエルのデータ会社IVC Research Center(以下:IVC)は、イスラエルのハイテク産業が成長を続けるための課題について分析した。
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成熟しつつあるイスラエルのハイテク業界
世界のハイテク動向によると2019年はあらゆる点で興味深い年であった。下のグラフは過去10年間のイスラエルのスタートアップへの投資動向を示している。10年前と比較すると、3000万ドル以上のディール件数が7倍となり、資金調達額も6倍に増加した。結果として2019年はスタートアップの資金調達額が1億ドルを突破したメガラウンドが続発した。
一方で、シードステージや投資家にとってメリットが薄いと考えられるスタートアップの資金調達額とディール件数は年間ベースでほとんど変化が見られなかった。上記で示したように、イスラエルのハイテク業界は成熟しつつある。AIを筆頭として市場に大きな影響を与えてきたイノベーションの多くは、数年間に及ぶ急速な拡大を経て成長し、その分野で地位を確立した成熟したスタートアップで起こっている。
図1:2010年から2019年にかけてのディールサイズ別資金調達額
しかし、イノベーションを促進させるためには、より多くの資金と人的資本の投入が必要である。また、成熟したスタートアップが魅力的な投資先として林立している状況では、投資家の関心は大規模な投資案件に向いており、ハイリスク・ハイリターンになりがちなアーリーステージのスタートアップへの投資を回避する傾向にある。
グロースステージならではの新たなエコシステムが誕生
イスラエルのハイテクエコシステムはこれまでアーリーステージのスタートアップが投資を受けるのに最適な環境を提供していた。しかし、2019年はこの環境が大きく覆された年となった。最先端のテクノロジーで成果を上げたイスラエルのスタートアップは今年、急成長を遂げた。これにより、より多くのリソースを用いてさらなるビジネスの可能性を広げるという、グロースステージのスタートアップならではの新たなエコシステムが生みだされた。
イスラエルは「スタートアップ・ネーション」から「スケールアップ・ネーション」への進化を達成したと言えるが、成長を継続できるかはローカルなエコシステムがスタートアップ構造の変化に素早く対応できるかどうかにかかっている。
IVC Research Centerに関して
IVC Research Centerは1997年に設立された会社で、イスラエルのハイテク産業に特化した企業情報、市場調査レポート、要望に応じたカスマイズレポートなどの情報サービスを提供している。現在保有しているアクティブな企業データは8,000社を超える。このデータは、現在の投資や技術のトレンドの全貌を掴むため、あるいは今後のトレンド予測にもとても有用であり、国内外の政府関係機関や大手ハイテク企業、VCを含む投資家など幅広い企業や人に利用されている。
Jakore, Inc. はIVC Research Centerと事業提携を結び、イスラエル現地のスタートアップ情報を提供しています。詳しくはお問い合わせください。
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