【スタートアップ深層】Salamandra Zone - 空気中の有毒ガス、ウィルスを分子レベルで分解

 毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。

 今回は、Salamandra Zone 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。 【後編:Water.IO - 消費者と生産者をダイレクトに繋ぐ「インターネット・オブ・パッケージング」 こちら

※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年9月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

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Sonovia(https://www.salamandra-zone.com/

Dr. Jason MigdalMicrobiology R&D Strategist

空気中の有毒ガス、ウィルスを分子レベルで分解し、空気を清浄する

 Salamandra Zone は、独自の空気清浄技術を持つ気鋭の エアテック企業だ。一般的な市販の空気清浄機は、フィルタ ーで有害物質を吸着し、きれいな空気を排出する仕組みにな っている。一方、同社は活性酸素の一種である「スーパーオ キシドラジカル」という物質を用いて、有害物質を分子レベ ルで分解し、無害化する技術を開発した。この技術により、 フィルター製の空気清浄機よりも高い清浄能力を実現した。

 今回は、同社 COO の Gil Tomer 氏に取材を行った。

「空気清浄プラットフォーム」として様々なユースケースに応用可能

 Salamandra Zone のコアバリューは、化学反応によって有害物質を分解する技術を確立し、その 装置(リアクター)を様々なユースケースに合わせて提供できる点だ。例えば、高層ビルで火災が発 生した際に、エレベーターホールを緊急避難先にするというコンセプトがある。


 「高層ビルの火災発生時には、エレベーターを使用 することができません。主な原因は CO2 などの有毒 ガスが高濃度に充満するからです。そこで、弊社の 技術を活用することで、エレベーターホール内の有 毒ガスを無害化し、一時的なセーフティゾーンを作り出せると考えました。このコンセプトは社名にも 反映されています」と Gil Tomer 氏は述べた。 Salamandra は火を司る精霊として伝承されてお り「Salamandra Zone = 炎の中でのセーフティ ゾーン」という意味を持つ。さらに、スーパーオキシドラジカルと有毒ガスの化学反応では、副産物 として酸素が発生する。「有毒ガスを浄化しつつ、人体に不可欠な酸素を生成できるため、一石二鳥 です(同氏)。」

図1. エレベーターホールを避難所にする B-Air (同社HPより)


 また、日常的なユースケースとして、オフィス内や家庭内の QOL を向上する サービスの開発を行っている。Gil Tomer 氏は、「空気の質を考える際に、1人 間の活動によって生まれる CO2、2外気中に含まれる排気ガスなどの有害物 質、3塗料などに含まれる化合物を 3 大要素として考慮する必要があります。オ フィスの閉鎖空間で CO2 濃度が高まると、集中力が低下すると言われていま す。外気を取り入れて空気の入れ換えをすると CO2 濃度は下がりますが、外気 中の有害物質を取り込んでしまいます。また、内壁の塗料から空気中に放出され る揮発性の有機化合物も見逃せません」と述べた上で「フィルター式では吸着が難しい微小な物質で も、弊社の技術は分子そのものを分解して無害化することができます」と同社の独自性を強調した。

ヘブライ大学との共同研究から生まれたテクノロジー

 画期的な技術を確立した Salamandra Zone だが、その道のりは困難の連続だった。共同創業者の 一人であり現 CEO の Marat Maayan 氏は、イスラエル国防軍(IDF)で 27 年間勤務し、チームビ ルディングに加えて、爆弾処理や化学テロリズム対策に従事した経験を持つ。その経験の中で、前述 の火災時におけるセーフティゾーンの重要性を体感し、同社の創業に至ったという。

 しかし、創業当初は開発が順調に進まず、何度かの失敗を経て、ヘブライ大学との共同研究にたど り着いた。同大学で 10 年以上にわたりスーパーオキシドラジカルの研究を行ってきた専門家ととも に、2015 年から共同研究・開発を開始した。2 年後の 2017 年、ついに技術を確立し特許を取得した。さらに、イスラエル・イノベーション庁(IIA)からの資金調達にも成功した。

ウィルスや細菌も分解し「ポストコロナ」の日常を支える

 Salamandra Zone の空気清浄メカニズムは、ガスだけでなくウィルスや細菌にも同じように作用し、分解することができる。新型コロナウィルスの世界的な流行は、同社にとって大きな市場開拓機 会であると Gil Tomer 氏は考えている。実際、中国や韓国、日本の企業などから問合せがあったという。

 「今後、家庭や商業施設、オフィスなどの屋内に加えて、自動車内や公共交通機関の車両内で、ど のような感染症対策を取るべきかが大きなテーマになると思います。そこで、弊社は現在、屋内の空 気清浄市場に重心を移動させ、いち早く行動を開始しました」と同氏は述べた。同社は現在、顧客の ニーズに明るく、最終製品を共同で開発するデザインパートナーを探している。パートナーシップを 結ぶことで、同社の最新技術を導入した新製品を素早く市場に投入し、市場機会を逃さないようにする戦略だ。

Enon Landenberg 氏

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 「世界中の人々のウェルビーイングにインパクトを与え、火災に よる被害を最小にすること」をビジョンとして掲げています。空気 清浄ソリューションを必要とする日本の企業様からのアプローチを 歓迎します。そしてイスラエルのイノベーションパワーと日本のも のづくりの知恵と歴史が合わさることで、より革新的なサービスが 生まれると信じています。

Marat Maayan 氏

◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

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◆ 9月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。

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