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【平戸講演】「日本企業が押さえておくべきイスラエル企業との協業の"コツ"」サイバーテックTokyo2019イベントレポート(後編)

11月26日(火)、27日(水)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された「サイバーテックTokyo2019」で弊社CEOの平戸慎太郎が登壇した。

【サイバーテックTokyoで講演する平戸】

 

「サイバーテック」とは?

サイバーテックは2014年の開始以来、イスラエルをはじめシンガポール、カナダ、パナマ、イタリア、そしてアメリカで開催する最大のサイバーセキュリティイベント。今年で3回目の東京開催を迎えることとなった「サイバーテックTokyo」には、民間企業・団体から国際機関、大使館、そして政府機関まで幅広い業界人が一同に会し、多岐にわたるサイバーセキュリティのトピックについて発表や活発な議論が行われた。

 

キーノートの一部をご紹介した前編に続き、後編では弊社CEOの平戸が講演した内容の要点をご紹介。

日本とイスラエル企業のオープンイノベーションの”コツ”

弊社CEOである平戸慎太郎は、日本企業とイスラエル企業のオープンイノベーションに関して、実際に自分が経験した事例を挙げながら説明した。

以下に、要点を紹介する。

  • イスラエル企業とは密なやり取りが必要

  • 両国の法規制の差が、ローカライゼーションコストに大きく影響することも

  • イスラエル企業への投資メリット ・・・広い市場と優秀で低コストなエンジニア

  • イスラエル企業への投資デメリット・・・評価額の高さと事業統合の難しさ

 

〜 楽天によるViber買収の裏側 〜

2014年、楽天はモバイル向けインスタントメッセンジャーで3位のシェアを持つViberを900億円強で買収した。実際に買収に携わった平戸は「これまで様々な国の買収に関わったが、一番イスラエルとの買収の交渉が大変だった」と言う。イスラエルはある種の村社会になっており、日本人がイスラエルの企業に会う時、必ずイスラエル人ネットワークを介してその日本人に関するレファレンスをとっている。そこで名前を聞いたことがない企業だと、最悪の場合面会を拒否し、ビジネスにつながらないことも多い。

イスラエルはまだ日本市場への理解不足がある。本当に日本にニーズがあるのか、わからない。だからこそ、現地での知り合いのつてを最大限活用したり、専属の日本担当者を置いたりして、イスラエル人と一緒にやっていくことが必要だろう。

また、買収後も様々な障壁が存在する。イスラエルのプロダクトを日本に持ってきても、すぐには使えない。日本とイスラエルがプロダクトに求める品質が異なるからだ。特に日本人は品質にとても重きを置いているので、プロダクトを日本向けにローカライズしていかなければいけない。また法律面にも障壁がある。日本とイスラエルでは法規制の厳しさが異なり、思いがけないところでリーガルコストが発生する。実際Viberでも、資金決済法や通信事業法、個人情報保護法など5つ以上の法律で問題があったと言う。このような、ローカライゼーションに関わるリスクやコストなども企業買収の際には想定しておく必要があるだろう。

 

〜 イスラエル企業への投資:メリットとデメリット 〜

イスラエル企業は一貫して国外市場に目を向けており、アメリカやヨーロッパに顧客を多く持っているのがメリットだ。投資や買収などによって、グローバル顧客の獲得が容易になる可能性がある。またイスラエル企業と協業することで、新たなアウトソーシング先の取得につながるのも魅力的だろう。平戸が経験してきた中では、イスラエルでは旧ソビエト連邦地域にアウトソーシングしている企業が多い。ウクライナやベラルーシュ、安価だが優秀なエンジニアを持っている国にアウトソーシングすることで人的コストを抑えることができる。

一方で、企業の評価額が高いことがデメリットの1つである。投資した金額の回収はかなり難しいと言える。また買収後の事業統も、日本人とイスラエル人の性格の違いやビジネス文化のギャップなどが障壁となり、進めていくのは簡単ではないだろう。

 

〜 イスラエル企業に投資する際の3つのポイント 〜

スタートアップ企業に投資をし、リターンを得ることは簡単ではない。最後に、イスラエルのハイテクスタートアップ企業に投資を検討する際に気をつけたいポイントを3つご紹介する。

  1. 投資先企業の将来的な売却に関する優先的な交渉権利を獲得しておくこと

  2. 知的財産(IP)の使用可能範囲を明らかにしておくこと

  3. 投資先企業のプロダクトに対して、投資元企業が日本で独占的な販売権を持つことができるか交渉しておくこと

特に2番目については、イスラエルでは政府がIPの放出に抵抗を示すことが多く、高額なコストが必要になることもあるので注意が必要だ。

 

ここまで日本企業とイスラエル企業のオープンイノベーションについて述べてきたが、投資において百発百中で当たるということはまずない。むしろ、「十発一中」が当たり前の世界で成功を収めるためには、企業選びに慎重になるよりも、まずはより多くの企業と実証実験(PoC)やNRE、あるいは投資を行っていくことが良いのではないだろうか。


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