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【スタートアップ深層】GuardKnox - ジェット戦闘機のメソッドを自動車のサイバーセキュリティに応用

毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。

今回は、GuardKnox 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。 【前編:BLender - 融資審査を全て自動化したP2P&ダイレクト・レンディングプラットフォームを開発】はこちら

※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年3月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

 

Mr. Gidi Geller(VP Sales and Business Development)

共同創立者は全員イスラエル空軍での従軍経験を持つ

 GuardKnox社(以下:GuardKnox)は、イスラエル空軍で技術開発や実装に関わってきた経験を持つ3人の共同創立者を中心に誕生した。空軍での経験を活かして自動車産業へ参入するという事例は一見すると異色だが、今回インタビューに応じてくれたGidi Geller氏は「両者にはいくつもの共通点がある」と述べた。

Gidi from GuardKnox

 「例えば、ジェット戦闘機には、自動車と同様に多数のECU*が搭載されています。また、部品の小型化・統合の必要性と重量制限がある点も共通しています。さらに、ジェット戦闘機はバックボーンにインターネットを持ち、その歴史は自動車よりも長いと言えます(同氏)。」

 つまり、GuardKnoxの創業メンバーは、現在、コネクテッドカーが抱えているサイバーセキュリティや安全性に関する課題と同等以上の性能が要求される環境下での経験が豊富だ。また、同社が開発する製品も、ジェット戦闘機の安全を保つために生み出されてきた考え方やメソッドを取り入れており、インターネットにおけるサイバーセキュリティ対策とは異なるアプローチを取っている。

 *ECU = Electronic Control Unitの略で、電子回路を用いてシステムを制御する装置の総称。

 

ソフトとハード両面でのロックダウン機能で特許を取得

 GuardKnoxのCTOやCSO**は、ジェット戦闘機など、高度な安全性能が要求される機器や設備へのサイバーセキュリティ・ソリューションの開発を手掛けてきた経験を持つ。 例えば、同社が開発している製品のひとつに、ECU間や外部ネットワーク(Wi-Fiやキャリアなど)と自動車間での通信を管理・監視するドメインコントローラがある。同製品のセキュリティ上の強みは、特許取得済みの強固なロックダウン技術だ。車載ネットワーク上でやり取りされるメッセージを振り分けすると同時に監視し、予め定められている正常な状態から外れるものは全て、疑わしいとして排除する(ステートマシン・モデル)。

 一方、同社は自動車のサイバーセキュリティのみに特化している訳ではない。「弊社の製品は、強力なサイバーセキュリティ機能を中核に有した、次世代のコンピューティング・プラットフォームです。高い安全性を実現するだけでなく、データの高速処理や、様々なソフトウェア、アプリケーションをインストールすることも可能です」とGeller氏は強調した。

 **CSO = Chief Security Officer の略

中央の「GATEWAY ECU」が同社の製品(同社HPより)

中央の「GATEWAY ECU」が同社の製品(同社HPより)

 

コネクテッドカーの未来は「スマートフォン」

 「言うなれば、コネクテッドカーはスマートフォンのようなものです。ユーザーのニーズや好みに合わせて、サードパーティが開発・提供する様々なアプリケーションをインストールし、カスタマイズすることが可能になっていくでしょう。例えば旅行に出かける際には、アウトドア走行に適したチューニング設定をインターネットからダウンロードして自動車をカスタマイズする、ということが可能になると思います(同氏)。」

自動車に様々なアプリケーションがインストール可能に(同社HPより)

自動車に様々なアプリケーションがインストール可能に(同社HPより)

 複数のアプリケーションをインストールできるということは、セキュリティ上の脆弱性につながると考えられるが、GuardKnoxはアプリケーションやソフトウェアがブレーキングシステムといった安全性に直結する機能にアクセスできないよう、ソフトウェアとハードウェアの両方で機能を「分離」する技術を開発し、特許を取得した。

 GuardKnoxは現在、日本市場への参入に向けて活動を進めている。「弊社の戦略は、第1に大手の完成車メーカーやティア1メーカーとパートナーシップを結ぶことにありますが、通信事業の企業にとっても弊社の製品は魅力的に映るはずです。今後、自動車という『モノ』よりも、その中身のサービスが新しい収益源になっていくでしょう。弊社の製品は、新たなサービスが安全かつ高速に稼働するための土台の役割を果たします(同氏)。」

 
BLender社CEOのGal Aviv氏

CEOから日本企業に向けたメッセージ

 この10年で、自動車関連のテクノロジーにおける日本とイスラエルの協業が急増しました。イスラエルのハイテクスタートアップは革新的な技術を生み出す一方、日本企業は世界の自動車産業の革命をリードしており、双方の戦略的な事業提携が不可欠です。 自動車のサイバーセキュリティおよびコンピューティング・プラットフォームとして世界で唯一の技術を持つ企業として、最先端のテクノロジーを探している日本の完成車メーカーと協業できる日を楽しみにしています。

− GuardKnox CEOの Moshe Shisel氏

 

◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら

◆ 3月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。

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