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【スタートアップ深層】Anagog - スマートフォンユーザーの行動パターンを理解するAIエンジンを開発

毎年1000社近いスタートアップ企業が誕生するイスラエル。革新的な技術やプロダクトを生み出し、世界から注目を集めているスタートアップの中から、特に「自動車・ヘルスケア・IoT」という3つの領域でイノベーションを起こしている企業に焦点を絞って取材を行った。

今回は、Anagog 社に彼らの創業過程や事業戦略、今後の展望、さらには日本市場への思いや本音を聞いた。 【後編:imVision Technologies - APIの異常検知・管理プラットフォームを開発】はこちら

※ 本記事は、JETROのイスラエル現地パートナーとして「Global Acceleration Hub」プログラムの一貫で作成され、2020年2月にJETRO Innovationに掲載されました。PDF版が記事下部よりダウンロード可能です。

 

Mr. Ofer Tziperman(CEO)

スマートフォンユーザーの行動パターンを理解するAIエンジンを開発

 テルアビブに拠点を置くAnagog社(以下:Anagog)は、スマートフォンのセンサーから集めたデータを分析し、ユーザーの行動を理解するAIエンジンの開発を手掛けている。スマートフォンには、カメラやマイクに加えて、加速度や回転、圧力、位置情報(GPS)、磁気といった様々な量を測定するセンサーが多数搭載されている。AnagogのAIエンジンは、これ らのセンサーから得られるデータを独自のアルゴリズムで分析することで、ユーザーが日常的に取る行動をAIが理解し、「今何をしているか、これから何をするか」といった行動パターンを高いレベルで推測することが可能だ。Anagogは日本企業からの評価も高く、NTT Data主催の「NTTデータ第10回オープンイノベーションコンテスト」で領域賞を、そして2019年に開催された「X5 Retail-Tech Challengeコンテスト」でも優勝しているまさに実力派企業である。

 今回は、AnagogのCEOのOfer Tziperman氏に取材を行った。

 

「顧客のことをより深く理解し、直接的に繋がりたいと考えている企業にとって、弊社のAIエンジンは最適なツールです。25の特許技術をベースに、スマートフォンのセンサーデータを解析する製品を開発している企業は、世界を見渡しても弊社以外に存在しません。」と述べる。 また、「弊社の創業チームには、信号処理やAIの専門家だけでなく、プロダクトマネジメントなどの分野でも10年以上の経験を持つメンバーが揃っており、エンジニアも皆高いプロフェッショナリティを持っています。」と語る同氏も、Anagog以前に2社のハイテク企業でCEOを勤めた経験を持つシリアルアントレプレナーである。

 

顧客が求めているものをジャストタイミングで届ける「究極のパーソナライゼーション」を支える

Anagogが開発するAIエンジン「JedAI」

「顧客が本当に求めていることは、自分の好みやライフスタイルに合ったサービスが、ちょうど良いタイミングで届くということです。前者をパーソナライゼーションとするなら、後者はコンテクスチュアライゼーションと言えるでしょう。弊社のAIエンジンの強みは、前者と後者を両方実現するための土台を提供できることです。」

 具体的には、コーヒーショップのクーポン券が、コーヒーショップに入店したタイミングで届くことで、その利用率や満足度が向上することが期待される。

 AnagogのAIエンジンは、スマートフォンユーザーの行動から、ライフスタイルなどの文脈を読み取ることができる。スマートフォンのアプリにAnagogのAIエンジンを搭載することで、ユーザーに対して、より最適なタイミングでサービスを提供することが可能になる。

 

プライバシー保護を前提とした設計で、電力消費を極限まで抑える

 AnagogのAIエンジンは、ユーザーのスマートフォンの中だけで全てのデータ解析を行なっており、プライバシー保護および消費電力の観点でさらに強みを発揮する。インターネットから独立してデータを処理することで、個人情報がユーザー本人のデバイスから外に出るリスクを無くした。

 「スマートフォンのセンサーから収集されたデータや、AIエンジンによるプロファイリング結果は、全てデバイスの内部で管理され、クラウドには繋がっていません。このため、クラウドへの攻撃によって個人情報が盗まれてしまうという心配も無用です。」と Ofer Tziperman氏は強調した。 また、消費電力が極端に少ないのも特徴だ。AIエンジンが1日の中で消費するバッテリーは、全体の1%とごく僅かである。

AnagogのAIエンジンを搭載したサービスのイメージ

ジムで日課となっているトレーニングが終了したタイミングで

健康的な朝食を提案するサービスのイメージ(同社HPより)

 

日本のシステムインテグレーターと協業し、スピーディな導入を目指す

 Anagogの製品は既に世に出始めている。ドイツの大手自動車会社のダイムラーをはじめとして、多くの企業から投資を受けており、同社のAIエンジンを搭載したスマートフォンアプリは、既に2500万台ものスマートフォンにダウンロードされ、日々ユーザーにサービスを提供している。

 同社はヨーロッパを起点として、アメリカやアジア圏への進出の機会を伺っている。日本では、コンシューマー向けのアプリを開発しているシステムインテグレーターと提携を結ぶことを目指している。Anagogは自社のテクノロジーをソフトウェア開発キット(SDK)という形でリリースしており、様々なアプリケーションに簡単に組み込むことが可能だ。「顧客との結びつきが強く、信頼されているベンダーやディストリビューターと協業することで、スピーディなビジネス展開が実現できると期待しています。」とTziperman氏は締め括った。

 
Inutive社のCEO Shlomo Gadot氏

CEOから日本企業に向けたメッセージ

1997年に初めて来日してから、長い期間にわたって、日本市場に注目してきました。昨年は、弊社の取り組みが、日本企業の主催するコンテストで高い評価を受けるなど、日本企業からの認知度が高まっていると感じます。日本市場は最も洗練された市場の一つであると考えており、日本企業と協業できることを楽しみにしています。

 

◆ 本記事はJETRO Innovationに掲載されました。

◆ PDF版の記事ダウンロードはこちら

◆ 2月は2社に取材を行っており、PDF版では2社まとめて紹介しています。

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